たまたま地元の図書館に行ったら、図書館員オススメの棚に、フェリックスとお金の秘密という本が置いてあったので、お金の本ということで、興味を持ち読みました。
いままでに子供向けで分かりやすくお金のことを学べる本としては、レモンをお金にかえる法という本を読んだことがあったので、この本も児童書ということでそんな感じのテイストなのかなあと思っておりました。
ところが読み始めたら内容のボリュームさと濃さに大変驚かされました。上述した本よりも内容が深く、これはもう児童書のレベルを越えているといっても過言ではないと思いました。児童書なので漢字に読み仮名がふってあるのですが、ある程度金融や経済のことが分かっているつもりの自分でさえも、うなるほどの内容の濃さでした。児童書とはいえ、小学生の自分だったら全てを理解できる自信がないですね。とくに、簿記や先物、オプションのことは必ずしも自分もそこまで詳しくないので、勉強になりましたね。
大抵こういう作品はおいおいそんなんでいいのかよとツッコミを入れたくなることがありますが、述べられている金融や経済についての内容は正当なもので、いい加減なことは書いておりません。
よくあるその辺の薄っぺらい内容の自己啓発じみたマネー本より遥かに面白かったですし、為になりました。
内容としては、ドイツの貧乏家庭の子供がどうしても金持ちになりたいと、アドバイスをもらいながらビシネスを始め、ひょんなことから大金を得てそのお金を株式で増やして…といった感じです。物語の時代背景はまだインターネット黎明期で、欧州でユーロが導入される前ですね。作中での通貨はマルクです。
この本の主人公のように、貧困や飢えがお金に対する強烈な欲求に繋がるのは確かに自分も当てはまるなあと思います。お金より大事なものがあるというのは勿論その通りだと思いますが、それでもやっぱりお金さえあればなんとかなるというのもまぎれもない事実だと思います。
株式投資や金融を扱った小説とか漫画だと、最後は全てを失って、(こち亀でよくあるパターンですね)やっぱり投資というのはギャンブルで怖いから、地道に働きましょうみたいな結末になりがちですが、そうはならないのが日本的でなくてとても良かったです。そこはやはり外国の作品といったところでしょうか。また、ストーリーもドイツ語選択の自分にとってはなかなか興味深いものがありました。日本は製造業の国だから、ものづくりこそが大切だから、投資で稼ぐのは汚いみたいな話を聞きますが、もはやそういう時代ではないことは我が国の国際収支を見れば一目瞭然ですね。日本国民全員で自動車を作っている訳ではないのですし。株式であれ、債券であれ、もう少しお金を働かせるというような考えを持ってもいいのかなとも思います。結果的に日本の場合は債券優勢だったのは事実ですが…
この本を読んだからと言って、直ちに投資で稼げるようになるというわけでは決してありませんが、簿記、株式、債券、先物の歴史的背景や基本的な知識を学んだり、改めておさらいするのには十分だと思いました。
読んで頂けるとわかりますが、山崎元氏も言っているように、マーケット以上に怖いのはやっぱり人なんだなあとつくづく思ってしまいました。当時は株式を買うにはブローカーを通さなければいけなかったわけですし。ネット証券の特定口座で米国株式やETFがクリックひとつでお手軽に買えるようになったのはまだつい最近のことですが、その意味においては本当にいい時代になったものです。そういうアドバンテージは最大限に生かしていきたいですね。